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木になる話
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引き出しの仕込み
民芸家具などで、片方の引き出しを押し込むともう片方がすうっと押されて出てきたりするのを見た経験はありませんか?又、引き出しがきつくなって出し入れがしにくくなったなどという事は無いでしょうか。

そうなんです。引き出しって、より美しく精度を高めて作ろうとすると意外に難しいものなんです。あまりにも隙間がありすぎると見苦しいですし(上述の民芸家具のような芸当はできませんし)、かといってきっちりしすぎると、いずれ多湿な時期に板が膨らんで引き出しにくくなったりしますし、その辺の加減が難しいのです。良く乾燥して、狂いの出にくそうな板(できる限り柾目板で)を選んで作る必要があります。

以下に述べるのは引き出しの調整(業界用語で「仕込み」と言います)の一例です。
引き出しの仕込み組み立てた引き出しを、まずあらかた削って差し込みます。(荒削りの段階)
引き出しの仕込み引き出しの部品は前板(鏡板とも言います)の方が、向う板(先板とも言います)よりも微妙に長く作られています。(ほんの2mm程度)手前が広くなっていますので、このように途中で入らなくなります。この状態から調整が始まります。
引き出しの仕込み少しづつ側板を削ってははめ、また削ってははめという作業を繰り返します。きつく当たっているところに鉛筆などで印をつけながら、削って調整します。
引き出しの仕込み作業台をうまく利用して削ります。引き出しの内部は、塗装はもちろんの事、サンディングさえしませんので、鉋(かんな)が最終仕上げとなります。滑らかになるよう気をつけて鉋がけをします。
引き出しの仕込み側板のほかにも、場合によっては前板の上下を少し削って調整する必要もあります。ちょうどいい具合に削れたら終了です。冬場は乾燥して痩せますし、夏場は多湿で膨らみますから、それを見越して微妙に調整します。
きりがないのでここには書いてありませんが、もちろんこの他にも様々な細かい技があります。すうっと入る美しい引き出しを作るためには、色々な事を考えて作らなくてはなりません。