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里山便りバックナンバー2006
里山便りバックナンバー2006
2006.12.13
「メディア」
すでに3週間以上も前の事になりますが、TV東京の「テレビチャンピオン」という番組から電話がありました。用件は「家具職人選手権に出てもらえませんか?」との事…。この番組の事は以前何かで見た事があったので、「ああ、あの番組か」とその内容は大体把握していました。

企画書を送りますから検討して下さいと言われたが、その場でお断りしました。およそ、私どもが普段行っている仕事の世界とは違う次元で、この番組作りは行われるだろうと思っての事です。

その後、同じ木工業界のとある方のブログの中にも、やはりこの番組から依頼があった事が書かれており、その企画書の内容も記載されていました。(工房Yさん、時々覗かせてもらってます。いつも刺激を受けています。) 思った通り、スピード重視でいかに早く簡単にアイデアを凝らした物を作るかを競うものでした。優勝賞金は50万円らしいですが…。
手仕事にこだわった作品作り残念ながら私は普段そういう物作りをしていないし、得意でもありません。そういう事に興味があり、得意な人は進んで出て、その個性を遺憾なく発揮してもらえばいいのではないかと思います。

又、8月頃にはA出版社から電話がありました。「現代日本の家具」という書籍を出版する事になり、ご協力頂きたいとの内容でした。話を聞いていると、家具デザイナーのY.S氏や家具作家のT.S氏など、そうそうたるメンバーも掲載が決定しているとの事でした。

「半布里工房さんの作品が当書籍刊行の趣旨に合うと思い、是非…」などと言われると悪い気はしませんが、「一度考えてからご返答します。」とその場は一旦お断りし、以前にその出版社から刊行された「現代日本の陶芸」という本を、知人の陶芸家から借りて見てみました。(ちなみにこの知人は、この書籍に載っていました。)

オールカラーで予想以上に分厚く(3cm以上はあるだろうか)、重く、値段も15,000円以上するものでした。又、この書籍は普通の書店では手に入らず、美術館か大学や専門学校、公立図書館などでお目にかかれるか、あるいはよほど大都市の大きな書店でしか手に入れる事は出来なさそうな感じでした。

つまり、なかなか一般には触れる事の出来ない書籍である事が分かりました。それに、掲載されるためにはスタジオを使って作品の撮影などもしなければいけないようで、このために幾ばくかのお金をはたく気もしませんでした。

ホームページを公開しているとこのような事がよくあります。TV局やTV制作会社から、「タレントの○○さんが取材に伺いますから、是非…」というような宣伝文句で、巧妙に誘ってきます。うかうかしていると引っかかってしまいます。危ない、危ない…。
手仕事にこだわった作品作りおよそメディアと言うものは、使われるものではなく使うものだと思います。これからも使われないように気を付けようと思います。
2006.12.07
「ものづくり3人展」
以前この里山便りで書いたと思いますが、地元出身の文学者を記念した文学賞コンクールが催され、11月にその表彰式がありました。その折に、賞状額を作って欲しいとの依頼があり、拙作を提供させて頂きました。

入賞者にはナラとウォールナットで作った額を、大賞者には栗の耳付き額拭き漆仕上げを作って提供致しました。(※ 写真の色紙は賞とは関係ありません。)
賞状額 賞状額 賞状額
紅葉がきれいな清水寺というお寺の境内で、落ち葉炊きの煙が傍らに上がり焼き芋が焼ける中、大変のどかで暖かい雰囲気に包まれ表彰式が行われました。子どもたちによるバイオリン演奏などもあり、充実した良い時間を過ごさせて頂きました。

表彰式の中で、私からも簡単なあいさつをという事で、「子供の時間の大切さ=子供の文化」という話しを思い出話という形でお話しさせて頂きました。ここでもどのような話か簡単に書かせて頂きます。

子供は子供らしい生活をする中で、多くの事を自然と学び、健全に成長していきます。これはとても大切な事だと思います。しかし大人はこの事を忘れて、子供達からその機会を奪っているのです。

大人が大人の都合で子供を振り回し、犠牲にし、回りまわって社会のゆがみを生み出している…常日頃からそんな思いがあり、お話ししたのですが、話し下手なので、多分うまく伝わっていないでしょう。

言いたい事はいろいろありますが、灰谷健次郎氏の逝去の報道があった事とも絡めて、是非またの機会に書きたいと思います。

ところで、この時に入賞商品や賞状揮毫を提供された富加在住の陶芸家と書道家、そして私の三人で簡単な展示会をしてほしいと当局の方からご依頼があり、一日限定の展示会を行なう事になりました。出品点数はおそらく数点で即売は無しというこじんまりとした展示会ですが、私はともかく、素晴らしい陶芸家や書道家の作品が展示されるので、一見の価値ありです。興味のある方はどうぞご覧下さい。

場所は工房からわずか東へ300メートル程にある造り酒屋の資料館の中です。展示会にお越しの際には是非、工房やギャラリーへもお立ち寄り下さい。(※地元のおいしいお酒も買えますよ。黒米で作っためずらしいお酒です。)

「ものづくり3人展」
作家:加藤委氏(陶芸)、長沼桂宇氏(書)、佐藤正裕(木工)
日時:平成18年12月10日(日) 9:00〜16:00
場所:富加町加治田 松井屋酒造資料館
主催:木村小舟を語る会
2006.10.24
「小さな発見」
工房を訪ねてみえたお客様が、たまたま制作中のタモ2枚接ぎダイニングテーブルの天板をじっと眺めていらっしゃいました。そして何やら発見されたようで「すごいね、きれいな模様だね」と一言。
左右対称の木目何の事かと見てみますと、2枚接ぎの接ぎ合わせ部分を木口の方から見ると、きれいな左右対称の年輪模様が出来ているではありませんか。

わざとではなく、たまたまそうなったのですが、まったく完全と言っていいほどの左右対称模様です。これは共木(同じ丸太から取った板)で、共板(同じ板)を2枚接ぎにしているからこそ出来たのですが、作った本人はうかつにも気付かず、お客様に教えられたというわけです。

小さな驚きの一日でした。
2006.09.11
「かんな派?のみ派?」
座刳り加工木の椅子は座刳りをする事によって、お尻の当たりが柔らかくなり、長い時間座っても疲れる事が少なくなります。この夏もたくさんの座刳り加工をしました。暑い時にこの作業は結構きついものです。

それでも、少し削っては手で確かめ、座って確かめ…という作業は、彫刻あるいは陶芸にも似た面白さがあります。コンマ1mm単位の正確さを求められる事も多い家具作りにあって、感覚と感性の部分を大きく働かせる仕事の部類に入ります。

ところで、この座刳りの方法は大きく分けて「かんな」で削る方法と、「のみ」で彫る方法とがあります。どちらを取るかはその人の持ち味となって表れます。
座刳り加工私の場合は、どうやら「かんな派」のようです。「四方反り台鉋」でさくさくとリズミカルに削る感じが、私にはとても心地よく、また仕上がりの少し控えめなそれでいて確かな手作り感がとても好きです。

のみの場合は、ダイナミックで素朴な手作り感とでも言ったらいいでしょうか。そういう作り方を好んで行う方も見えます。もちろん私も時には行います。

今日はいろんな座刳りを見て頂きたいと思います。
座刳り加工座刳り加工πチェアKOSI-KAKEなど、当工房で一番多い座刳りのタイプです。「四方反り台鉋」で座刳りをした後、サンドペーパーで仕上げて滑らかにします。
座刳り加工座刳り加工サンドペーパーによる仕上げをあえて行わず、「四方反り台鉋」の削り痕をそのまま残して見せるやり方です。手作り感がダイレクトに出ます。
座刳り加工中央に向かって緩やかにへこませる座刳りの仕方です。シンプルな味わいが出ます。和洋どちらにも合うと思います。
座刳り加工座刳り加工「子供椅子」の座刳りの仕方も中央に向かって緩やかにへこませる削り方で行っています。そして、鉋の削り痕をあえて残して見せています。
座刳り加工ダイニングテーブル用 子供椅子」の座刳りです。赤ちゃんのかわいらしいお尻が柔らかく馴染むように、円く座刳りをしてあります。もちろん「四方反り台鉋」の削り痕をそのまま残し、滑りにくくもなっています。
座刳り加工のみによって表面に痕を残しました。
座刳り加工槍鉋(ヤリガンナ)によって表面を削ってあります。
座刳り加工座刳り加工ベンチの座刳りです。鉋(カンナ)の痕を残して表情を出しているだけでなく、座った時に滑りにくくもなっています。

あなたはどんな座刳りがお好きですか?
2006.08.30
「夏の思い出」
今年の夏は例年にも増して、異常に暑かった。工房内は蒸し風呂のような暑さで、外に出た方がどれだけか涼しいか…くらいに感じました。7月、8月とほぼ休み無く、この暑さと格闘しながらの仕事が続きましたが、そんな中で久しぶりに家族と旅行をする機会を作って、行って来ました。

九州旅行行き先は、福岡から大分別府温泉、湯布院、熊本の阿蘇方面です。急に決めた旅行でしたが、運良く宿が取れました。

子供の楽しみは、飛行機に乗る事、遊園地で絶叫アトラクションに乗る事、湯布院散策などです。妻の楽しみはゆったりと温泉につかること、そして湯布院と阿蘇外輪山の眺め。私の楽しみは、一度は行きたかった阿蘇の草千里、雄大なやまなみハイウェイの景色です。
九州旅行行く前はずっと記録的な大雨が続き、当地にも甚大な被害が出ていると言うニュースが連日報道されていました。又、年間で30日ほどしか好天には恵まれないと言う当地の天候ですので、天気を心配していました。

しかし、運良く3日とも好天に恵まれ、気持ちの良い旅行になりました。澄み切った空と草千里の美しさ。我が故郷、岐阜の山々とはまた違う雄大な山の景色。心がすっきりとなりました。
木製コースターもちろん、ちゃんと家族サービスもしましたよ。木製の絶叫コースター「ジュピター」にも乗ったし…。(あぁ、もう2度とはごめんです。) 垂直落下の絶叫アトラクションは、父親抜きで、子供と妻がキャーキャー言いながら乗ってました。

ところで、今回の旅行はバスガイドさん付きで観光したのですが、このバスガイドさんが良かった。大げさに言うと、私の住む中部地方近辺にはもう無くなってしまったんじゃないかと思われる「バスガイド文化」というものに触れたような気がしました。

バスガイド人気も凋落傾向になって久しく、耳にするところでは、子供の修学旅行など、ろくにガイドも出来ないような人でも、ただ相手さえしていればよいぐらいの感覚でバスガイドになる人も多いとか。

でもかつては見事なバスガイドさんがいたものです。飽きさせない話術と豊富な専門知識、機転の利く応対など、疲れや眠気も忘れるようなすばらしいガイドぶりを見せてくれたものです。今回のガイドさんも、若いけれどそんなすばらしいガイドぶりで、実に旅行のすべての工程を満喫させてくれました。(2家族でバスを独占という、なんともゆったりとした旅行でした。)

思うに、これは個人の資質による所だけでなく、やはり当地に残る文化のせいでもあるのでしょう。観光地北九州が持ち続ける矜持と将来に向けての努力がさせる業だと思います。

いつもは、旅行と言えば、どこまででも私の運転するワゴン車に家族全員で乗って行き、夜になれば運転疲れの私はビールの回りも普段以上に早く、ノックダウンというパターンでした。しかし、初めてこういう旅行を経験して、こういう旅もいいものだと思ったのでした。

いつでもビールが飲んでいられるしね…。
2006.07.29
「頼もしい助っ人」
栃の一枚板大きな栃の一枚板を削っています。

巾は81cm〜110cm、長さが2m70cm、厚みは6cmほどの大きさで、10人ぐらいは楽に並んで使える大テーブルになります。おそらくこの板の重さは100kg近くになる事でしょう。

このくらいの大きさになると、1人では持ち運ぶ事はもちろん、ひっくり返す事もできません。今回の板は、何とかかんとか台車を駆使して、工房の中まで運び込んで、作業台に乗せるまでは出来たのですが、ひっくり返す事ができません。こんな時は妻にも声をかけて片方を持ってもらい、ひっくり返します。大変助かります。

ところが、この時はあいにく妻が不在でした。困っていた所、ちょうど夏休みで子供が家にいました。今年中学生になって、部活で日々体を鍛えている息子です。このごろは、一緒にキャッチボールをしても、父より強い球を投げ、遠投力もすでに父を超えるようになっています。

ちょっと頼んでみるかと、息子を呼び、片方を持ってもらい、ひっくり返す事に成功しました。プールや川で父につかまって遊んでいた頃、父と相撲ごっこをして簡単に投げられていた頃、キャッチボールをしても、父の投げるボールの強さにはかなわなかった頃…そんな頃がついこの間だったような気がします。

ところが、もうこうして父の仕事を手伝えるまでに大きくなったのです。何か特別な感慨が押し寄せてきます。うれしいに決まっていますが、少し寂しいような…。まぁでも、これからもきっとたまに父をこうして助けてくれる事でしょう。
栃の一枚板ところで、板削りの方ですが、これはもうひたすら体力勝負です。

当工房では、どんなものを作る場合も鉋がけは必ず行います。鉋がけをしないでサンダーだけで研磨して塗装して仕上げるのと、鉋がけをしてからサンダーで研磨して塗装して仕上げるのとでは、やはり違いが出てきます。

鉋で適切に削られてこそ初めて、その木の持つ本来の表情というものが出てきます。とくに木目を浮き立たせたいような良い表情のテーブルの天板の場合や、樹種によってその差異がはっきりと表れます。又、仕上げ後の手触りも変わってきます。

しかしそれにしても、夏場の暑さも加勢して、この大テーブルの鉋がけはたいへんな作業です。端から端まで一削りするだけで汗が噴出します。3回、4回と繰り返し、切れ味が落ちてくると刃を研ぎ、また繰り返す…。汗だくになってようやく片面を削り終えた頃にはぐったりとなっている。そんな感じでやってます。

S様、もうしばらくお待ち下さい。暑い夏の工房で、あなたのテーブルセットが日に日に形になっていっております。
2006.07.15
「木の色」
先日、ウォールナットの家具をご依頼頂いているお客様から、「制作中のスナップが見てみたい」というメールがあり、制作途中のスナップ写真をお送りしました。

すると、「制作過程での木目はずいぶん明るい色ですね。仕上げた後に無色のオイルを塗るだけで、ホームページのようなブラックウォールナットらしい色になるのですか?」との返信がありました。

どうやら完成後の深い色のウォールナットのイメージをお持ちだったようで、制作途中の、白っぽいぼやけた板の色を見て心配になったのでしょう。ナチュラルのオイルを塗るだけで、深い色が出現しますというような内容をお返しし、安心して頂きました。

木というのは、加工の過程ではどんな木も比較的白っぽい肌をしています。ところが、これにナチュラルのオイルを塗装すると「濡れ色」がつきます。そこで初めて、その木が持つ本来の色合いが出現してくるのです。板を、濡れた布巾か何かで拭いてみれば、大体の感じが分かると思います。

さて、本日は塗装前の板の色と、オイルによるナチュラル塗装後の板の色とを比べて、木本来の色と言うのを見て頂きたいと思います。

ウォールナットの塗装前ウォールナットの塗装前1枚目が塗装前(かんな削りの後)、2枚目がオイル塗装後です。オイルはリボスオイル(植物性無公害オイル)のクリアーを使用しています。

お客様のディスプレイやパソコン環境によって若干見え方が異なりますので、違いが分かりにくい場合があるかもしれませんが、塗装前と塗装後の色合いの違いが分かって頂ければと思います。(※ 上記はウォールナットの例ですが、色々な材の色の変化は「木になる話」でもご紹介しています。)

家具を作っていて一番楽しみな時は、加工が終わり最後にオイルを塗って仕上げる時かもしれません。きれいな木の色がオイルによって浮き出てくるのを見ると、とても嬉しくなり、作って良かったという気持ちになります。

木が最後にくれるご褒美のようです。
2006.07.05
「じゃがいもの収穫」
じゃがいもの収穫このところ続いていた雨の晴れ間をねらって、いよいよじゃがいもを掘り出す事にしました。

実はこの日は、我が家では最も楽しみにしている日の一つです。どこのスーパーで買ってくるよりもおいしい(と自画自賛)じゃがいもが、今年もどっさりとれました。これで半年以上は又おいしいじゃがいもが食べれます。

近所のご老人方によると、今年はじゃがいもの出来があまりよくないという話でしたが、うちはとりあえず例年並にいいじゃがいもがとれました。いい土を長年にわたって作り続けてくれた、今は無き我が祖母や我が父に感謝です。

ところで、これだけのじゃがいもですから、我が家だけで食べきれるものではありませんので、当然親類や知人におすそ分けということになります。(じゃがいもだけではありませんが…)そして、みなさんにおいしかったよと喜んでいただける事…これも野菜作りの楽しみの一つにほかなりません。
じゃがいも料理さて、早速今夜のおかずもじゃがいも料理です。とれたてのじゃがいもは、特別に調理をしなくても、少しあたためてマヨネーズとしょうゆにつけるだけでも十分においしいものです。今夜は妻がサラダとポテトグラタンに調理してくれました。

これからまたトマトやすいか、きゅうり、なすなどが続々収穫できる時期になります。旬のものを食べる生活が続きます。楽しみは続きます。
2006.06.27
「木を生かす者=木工家?」
人口もさほど多くない田舎に住んでいますと、いつのまにか噂は広がり、何か木で変わったものを作っている人がいるらしいという事で、私のような者のところにもいろんな話が飛び込んできます。特に多いのが、「うちに珍しい木があるけど使って下さい。」と言って、木の寄付を受けるパターンです。

木々例えばこの写真。左から、槙の木を切ったもの(2本)、桑(と思われる)虫食いの板(2枚)、そして、ケヤキ(と思われる)輪切りの板です。

槙と桑は、あるお寺が改築のために鐘撞き堂を整理していたら出てきたと言う古い木です。前住職が木が好きで取っておいたものらしいです。ケヤキの輪切りも相当古くから家に転がしてあったというものを、ある方がわざわざ郡上八幡から持ってみえました。
木々この写真は、近くのお寺の境内にある桜の木が大きくなりすぎて枝打ちをする事になった時、「あげるから、持って行って何かに利用して下さい。」とお声がかかったものです。普段家具を作る時に使う材料と比べると、いずれも大きな材でなく、正直言って決して使いやすい木とは言えません。しかし、改めてこんな事を思います。

私たちは材木屋さんや市場で、直径1メートルもあるかと思うような木を仕事柄見慣れています。又、大きな木を普段大量に消費しています。でもそのおかげで、木の一本一本の尊さを本当は忘れがちになっていないでしょうか。(「百年生きてきた木は、家具としてまた百年生かす」などとえらそうに言っていますが…。)

「本当に珍しい大きな槙の木です。」と言って私に声をかけて頂いた方の、その木に対する思い入れが、実は木を扱う者が忘れてはいけない原点なのかもしれません。例えば自分が庭に植えた木でしたら、たとえ直径10cmぐらいであっても、とても大きくなったと思えるでしょう。
木々ですから、私はこれらの木をありがたく戴いてきます。お声がかかると言うのは嬉しい事ですし、それらの木を何らかの形で再生させて、その命を永らえさせてあげたいと思います。(写真は捨てられていた栃の切り株から作った一輪挿しの拭き漆仕上げです。 )

私は、木を素材として出来るものは何でも作りたいと思っています。もちろん家具が中心とはなりますが、家具にはしにくい木にも何らかの形を与えてあげたいと思います。

ある小学校が校舎を増築する事になり、校庭の桜の木をほとんど全て切る事になりました。私もよく知っている小学校ですが、4月になると新しい先生と仲間で希望にあふれて、満開のこの桜の木の下で記念写真を撮っていたものです。そういうシンボルの桜がありました。

でも、その桜の木も切られてしまう事になり、そしていつのまにか本当に無くなっていました。もし一言知らせてくれれば、例えばその桜でベンチでも作って、また子供たちと共に時を過ごすお手伝いが出来たと思います。桜は切られても再びまた命を与えられる事になっただろうと、非常に残念に思いました。

話は変わりますが、地元出身の文学者を記念した文学賞コンクールを立ち上げる事となったようで、私のところにも記念の賞状額を作って欲しいという話が来ました。(もちろんボランティアです。)

ついては、関係誌やポスターに名前と紹介文を載せたいとの事で(固辞したのですが…)ゲラを見せてもらうと「工芸家 佐藤正裕氏」となっていました。すぐに「こそばゆいから工芸家はやめて欲しい。」と断りました。何度か「いいじゃないか」「いやだ」の繰り返しの後、結局「木工家」として落ち着きました。

「木工家」も大変こそばゆい感じですが、でも私自身はやはり「木を生かす者」として「家具職人」「家具作家」に留まらず、「木工家」でありたいと思っています。 だから、私の名刺には一言「木工 佐藤正裕」と書いてあります。
2006.05.27
「野菜畑から」
野菜畑今年も畑の元気な季節がやってきました。

例年同様、たくさんの野菜を畑で育てていますが、木の仕事と同様になかなか楽しいものです。
じゃがいもの花ところで、この写真の花は何の花だか分かりますか?

これはじゃがいもの花です。今を盛りに、可憐な花をいっぱい咲かせています。ところが、実は私はこのかわいい花をちぎって取ってしまいます。

なぜならば、少しでもおいしいじゃがいもが取れるようにするために、栄養が花の方に取られないように、かわいそうだけどこのきれいな花をちぎってしまうのです。

大事なのは花ではなくて、じゃがいもの実です。この事は近所に住むご老人(私が勝手に畑仕事の師匠と思っている名人)に教えて頂いた事です。
トマトの茎この写真は、トマトの茎の写真ですが、茎から枝が出ているところに脇芽が出ているのが分かります。

書店などにいっぱい並んでいる野菜作りの本や雑誌には、必ずこの脇芽を摘んで取るようにと書かれていますし、たいていの人が知っています。脇芽を摘んで1本で仕立てる方法です。その方が、大きく元気なトマトが出来るからです。

ところが、わが師匠は「下の方から数節目の脇芽で元気な物を1つだけ残して、それを伸ばし2本で仕立てると良い。その代わりあまり高く伸ばさない事。その方が1本で仕立てるより、よく実の入ったトマトがたくさんできる。」と教えてくれました。それ以来それを実行していますが、トマト作りはなかなか奥が深い…。

私はトマトを作るのに、他の野菜と比べて出来る限り肥料をやらない事にしています。水もほとんどやりません。それどころか、雨も出来る限り当たらないように透明ビニールで屋根を作っています。

畑作りを始めた頃は、どの野菜にも結構肥料や水をやったりしていました。ところが、病気になって枯れてしまう事が多かったのです。ある日「トマトはもともと雨量の少ない地方で、やせた土地で栽培されていたものが日本に入ってきた。」という事を知って、出来るだけ水も肥料もやらず、厳しく見守る事にした。(元来、わが畑の土は栄養が豊富なので、元肥も最小限とし、追肥もほとんどしないようにしました。)

それ以来、うまくいくようになりましたが、わが師匠もある日こんな事を言っていました。「プロのトマト農家の土はな、マルチの下をめくってさわると、ほこりが出るくらいカラカラに乾いとる。」

私の親類に、県の植物アドバイザーをしていたおじいさんがいます。生前は随分かわいがって頂き、植物についても教えて頂きました。

そのおじいさんがある日、こんな事を言われました。「花を育てるのと子供を育てるのは同じやぞ。花をよく見て、水をほしがっとると見えたら、そのとき水をやる。十分な顔をしとる時はやらんでいい。やりすぎてもいかんし、足りなくても死んでしまう。」

至極名言だと感じました。野菜作り、植物作りも達人の域に達すると、そこから人生に対する一つの識見が見えてきます。日々楽しみながら、野菜に教えられる事も多いです。そして何より、畑で取れた野菜をおいしそうに食べてくれる家族の顔がうれしいです。だから野菜作りはやめられない。
2006.04.25
「家具のメンテナンス」
テーブルを納品したお客様からメールが届きました。

「佐藤さんに作っていただいたダイニングテーブルとチェアー大切に使っています。友人も何人か自宅に来ましたが、一番目に付くのはテーブルで、みんなに好評です。ところで、とくにテーブルはよく拭いているためかオイルが落ちてきた様な気がします。専用のオイルなどを塗ったらよいのですか?メンテナンスの方法を教えて下さい。」というような内容でした。

メンテナンスワックス通常私どもでは、テーブルトップの場合、オイルを2回、更に撥水性の高いオイルワックスを1回、計3回塗っています。もちろん、純植物性無公害のものです。

お納めしてまだ半年くらいですし、ナチュラル仕上げで製造上問題はないはずなので、少し早いなあと思いつつも、「ちょうどよいメンテナンス用のオイルワックスがキットになって発売されていますから、それを使われる事をお勧めします。価格も大変お安いですよ。」とお知らせしました。メンテナンスはし過ぎて悪い事はないはずですから…。
メンテナンスワックスその後、お取り寄せしたそのメンテナンス用のオイルワックスを持って、実際に様子を見がてら、塗り方のご指導もさせて頂きにお客様の家にお邪魔しました。気になっていたテーブルは半年近く経つのですが、驚くほどきれいに使って頂いており、チェアーも含めて大変愛着を持って頂いている印象を受け感激しました。

「このテーブルを囲んで、チェアーに座って過ごしている時間が多いんですが、座りやすくて、本当に佐藤さんに頼んでよかったと思ってるんですよ。高校生の息子も『将来はこのテーブルを使いたいからちょうだい。』と言うんですが、『自分で稼いで佐藤さんに頼みなさい』と言ってるんですよ。」とのお言葉も頂き、本当に嬉しく思いました。

ところでオイルの状態はというと、お客様の言われるほどオイルが落ちている様子もなく、ほっと胸をなでおろしました。このくらいでしたらまだいいと思いましたが、せっかくですから塗り方をご説明し、実際にお客様にその場で塗って頂きました。メンテナンスはこまめにすればするほどいいですし…。

おいしいコーヒーをいただいて色々なお話をし、少し時間が経ってからウエスで拭き取りもして頂きました。完全に乾くまでに必要な時間などのお話をして、お客様の家を後にしました。

私の場合は「無垢の木の家具にナチュラルオイル仕上げ」という仕上げが多いです。傷や汚れはある程度当たり前。むしろその傷や汚れも家族の歴史となり、思い出となっていくのですから…。

それに無垢の木の家具は、後で再生修復する事ができるのがいいと思っています。実際我が家で使っている家具は、汚れたり傷ついたりしたらそのまま。メンテナンスは正直ほとんどしていません。

しかし今日ばかりは、このお客様の家具に対するいたわりと愛着を見る事ができ、そういうお客様の気持ちに応えられる様な家具作りを、そして仕上げの質を高めていかなければと強く思ったのでした。
2006.04.21
「若芽の芽吹き」
桜の花も散り、山々は新緑の芽吹きを見せ始めました。この季節になると、せせらぎ沿いに新緑の街道をドライブしたいという気持ちがうずうずしてきます。でも、いい季節になって山の木々が活動を盛んにし始めるのと、人間の活動が盛んになるのはどうも同じようで、なかなかのんびりとドライブしている時間は残念ながらありません。

幸い、そんな遠くへ出かけなくても、ここ富加の里は居ながらにして新緑の風情が味わえるのですから、ありがたい事です。

ところで、普段木を素材にして家具作りをしているわけですが、実際には製材された板の状態か、あるいはせいぜい伐採された丸太の状態でしかお目にかかっていません。タモ、栓(セン)、栃(トチ)、楡(ニレ)、胡桃(クルミ)、ウォールナット、みずなら、欅(ケヤキ)…。いずれも山に生えた状態で、葉も実もつけたまま見られるものは滅多にありません。実際私どもでも、板を見て区別がついても、葉や表皮を見て区別がつかない木はいっぱいあります。

そんなわけで、出来れば実際に家具に使われる木がどんな状態で育っているのか、また育っていくのかを知りたくて、いくつか若木を育てています。
タモ 栃(トチ) 栓(セン) 栓(セン)
1番目の写真がタモです。「あおだも」という種類です。家具には「やちだも」という種類の方がよく使われますが、ヤンキースの松井でおなじみ、バットの材料としてこのあおだもがよく使われるので、 野球好きの息子のためにこちらを入手しました。

2番目の写真が栃(トチ)です。最近、無垢一枚板のテーブルの材料として大人気の栃の木も初めはこんなかわいらしい若木です。これが直径1mを超えるような大きな木に育つのですね。

3番目と4番目の写真が栓(セン)です。別名「はりぎり」と言うくらいで、先のほうに針のようなとげがあります。子供が手を広げたようなかわいらしい葉の形をしています。

これらの若木も芽吹きを始めました。瑞々しい若芽の誕生です。

2006.04.09
「春」
春…桜…入学…希望の春です。

息子は中学に入学、新しいスタートを切りました。これを機に息子の部屋を整備。今までは、部屋はあっても事実上使ってなかったような状態だったので、これをチャンスに自立心を育てようという親のたくらみ?です。とはいえ、すでに日常の息子の様子から、そろそろそんな雰囲気が感じられていたせいもありますが…。

息子と一緒に机や本棚を動かしたり、ベッドを動かしたり、掃除をしたり。もちろん小学校のノートや本を段ボール箱に入れたり。普段あまり掃除などする事のない息子も、一人で黙々と何やら運んできては整理しています。お気に入りのボールなども本棚の上に置かれた様子です。

何も言いませんでしたが、いつのまにか昔買ってやったスーパーファミコンや任天堂64などは納戸の奥の方へ仕舞い込んでしまったようです。とてもきれいになったこの部屋で、また新しい1ページが始まっていく事でしょう。

親がこんな商売をしていると、普段どこかへ連れて行ったり、贅沢な事はあまりさせてやれません。唯一してやれる事は子供の使う物は親自ら作ってやる事ぐらいです。学習机、椅子、本棚、ベッド…一応父親の手作り、いや「半布里工房謹製」…です。
手作りの学習机 手作りのベッド 手作りの本棚
小学校入学の時作ってあげた学習机は、数日間大喜びでその上に乗ったり飛び降りたり、ブリッジをしたり…でした。(本来の使用目的と違ってる?)勉強が嫌いなものですから、その後はろくに使ってはくれませんでしたが、でもまあこれからは少しは使ってくれる事でしょう。

部屋を片付けていると高校生の長女がやってきて「お父さん、本がいっぱいになって、もう本棚に並ばないよ。」「わかった新しいのを作ってあげる。」娘の本棚もついでに新調となりました。
2006.03.19
「一木一会ならぬ一期一会」
もう1年も前になるでしょうか。ご婦人が二人、当工房を訪ねて下さいました。展示会に来て頂いたある方に聞いてお訪ね頂いたようでした。

工房の様子「静かでいいところだわ。」
「やっぱり木はいいわね。」
「木のいい匂いがするわ。」
「この木は何と言う木かしら。」
「高いんでしょう。」
仲のよいお二人のようで、ひとしきりおしゃべりをされて(私も少しだけお話をして)、ギャラリーの方もご覧頂き、そして「○万円ね。またお金がたまったら来るわね。」という言葉を残して、風のように去っていかれました。
工房の様子仕事の手を止めて応対をしていた私は、そのお二人のパワーにあてられた感じで、少しコーヒーを飲んで気を取り直してから、また仕事を再開したのでした。

それから1年ほど経った先日、また突然そのお二人があの時と同じように、風のように現れたのでした。

「私テーブルが欲しいわ。」「座卓がいいわ。」
「あなた、お金たまったんでしょ。」「ためたわよ。」
「あっ、これこれ、このテーブルのこの木がいいわ。これでお願いするわ。」

私「それは○○という木ですよ。オイルで仕上げるとこんな感じになりますよ。」

「あ、いい。私、これ好き。」
「こういうおもしろい感じがいいわね。そういうのにしていただける?」
「大きさは、畳と同じぐらい?大きすぎる?私んちそんな豪邸じゃないから。あはは。」
「そうしたら、○万円ぐらいね。お願いしますね。大きさを測ってまた来ますね。」

…そしてまた風のように去っていかれました。

工房へは、いろいろな方がお出でになります。人それぞれ、様々な想いを抱えていらっしゃいます。このご婦人の1年という時間の中に、ほんの少しでも当工房の存在を置いて頂けた事に感謝です。

当ホームページの大テーマは「一木一会」です。これは言うまでもなく、あの「一期一会」からとったものですが、今回改めて、その意味の持つ大切さを噛みしめる事になりました。
2006.03.10
「ホームページ再開」
半年振りのホームページ再開です。更新を停止していた半年の間にも、多くの方にお問い合わせをいただき、ありがたく感じました。これからもこのホームページを媒介にして、お客様と密に対話をしていければと思っています。今後もよろしくお願い致します。